「何もかも投げ出して、逃げたくなる時だってあるんです…」自ら応募して来た人妻との待ち合わせ場所に選んだのは浜松町。やって来たのは初々しさを残した可憐な女性だった。クルクルと変わる表情、話題の尽きない会話、そして人妻らしい心配り。私はすぐさま彼女の魅力に完璧に引きこまれていった。彼女と居るとまるで学生時代に戻ったかのような瑞々しい感覚がこみ上げてくるのはなぜだろう？東京湾をクルージングしながらのランチ。悪戯っぽくワイングラスを重ねる表情に年齢は感じない。「逃げたくなる時だってあるんです…」彼女が切なげに呟いた瞬間、堪らなく愛おしくなった。残された時間が気になり出した頃、私は彼女の細い腕を取り強く抱きしめた。恋人のように…。
